Same Old Story
結婚式
- We Will Marry, Father
- http://www.junkwork.net/stories/same/092
「もう、後戻りはできないよ?」
僕の呼びかけに、彼女は黙ってうなずいた。純白の衣装がまぶしいくらい似合っていた。
僕らは今から結婚する。式を挙げるのだ。二人が付き合い始めてもう五年……決して若さゆえの過ち、じゃあない。それなのに、それくらいわかってるはずなのに……。
「ね、また表情が固くなってるよ」
純白の彼女が僕の顔を覗き込む。
「わかってるよ」
僕の悩みの元は、お互いの両親にあった。僕らがどんなに真剣であることを説明しても、彼らは結婚を承諾しなかった。だからこうして半ば強行で式を挙げ、嫌でも認めさせるつもりだ。
「集まってくれたヤツらに悪いからね」
友達を集めてのささやかな式。彼らに悪い思いをさせてはいけない。僕は、式場のドアを開けて入場した。
「……父さん! 母さん!……どうしてここに」
そこには僕の両親と彼女の両親がいた。そして、二人の入場を拍手で迎えてくれているのだった。
「お前の似合わないタキシード姿でも拝んでやろうと思ってな」
親父がいたずらっぽくささやいた。その声はやけに嬉しそうだった。
Fin.