monologue : Same Old Story.

Same Old Story

結婚式

「もう、後戻りはできないよ?」

僕の呼びかけに、彼女は黙ってうなずいた。純白の衣装がまぶしいくらい似合っていた。

僕らは今から結婚する。式を挙げるのだ。二人が付き合い始めてもう五年……決して若さゆえの過ち、じゃあない。それなのに、それくらいわかってるはずなのに……。

「ね、また表情が固くなってるよ」

純白の彼女が僕の顔を覗き込む。

「わかってるよ」

僕の悩みの元は、お互いの両親にあった。僕らがどんなに真剣であることを説明しても、彼らは結婚を承諾しなかった。だからこうして半ば強行で式を挙げ、嫌でも認めさせるつもりだ。

「集まってくれたヤツらに悪いからね」

友達を集めてのささやかな式。彼らに悪い思いをさせてはいけない。僕は、式場のドアを開けて入場した。

「……父さん! 母さん!……どうしてここに」

そこには僕の両親と彼女の両親がいた。そして、二人の入場を拍手で迎えてくれているのだった。

「お前の似合わないタキシード姿でも拝んでやろうと思ってな」

親父がいたずらっぽくささやいた。その声はやけに嬉しそうだった。

Fin.

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