monologue : Same Old Story.

Same Old Story

自己中心

『税率引き上げ反対』

大きなプラカードを持った威勢のいい集団が、駅前の大通りを我が物顔で占拠している。

「大差ないな」

私の隣でそれを見ていた彼が、吐き捨てるようにつぶやいた。

「大差って? 何が?」
「デモ行進。あれって一種のテロだろ?」

何気ない表情で、危なっかしいことをさらりと言う。聞く側の私がひやひやするくらいだった。

「いきなり何怖いこと言いだすのよ、テロとは全然違うじゃない」
「そうかな」

目を細めて顔をしかめる彼。

「自分の思いどおりにならなくて悔しいけど、張本人に直接言うことはできないから、どこか別のところで力ずくの行為に出るわけだろ」
「まあ……うーん」

彼の言うことは、いつもいつも微妙なセンをついてくる。

「自分は間違ってないと思い込んでるあたりもそっくりだろ」
「でも、誰も傷つかないでしょ?」

彼は黙って何か考えているようだったが、しばらくすると通りの車を指差して言った。

「例えばあの車が、病院に輸血を運ぶ車だったら? 社運を賭けた大事な会議に向かう重役の車だったら? 誰も傷つかないですむと思うかい?」
「でも、そんなときは状況を説明すればきっと」
「彼らは道をあけはしないよ。トラブルは政府の責任にするから、巻き込む相手は多い方がいいのさ」

ふふっと笑って、彼は続けて言う。

「他にいくらでも方法があるのに、自分たちは一点の曇りもない正義だと信じ込んでるから、盲目的にこんなバカなことするんだろうな」
「……じゃあ聞くけど」

そのとき、デモ行進をしていた団体の中から、断末魔のような壮絶な悲鳴が聞こえた。声のする方を見ると、爆発音に続けて数度火柱があがった。爆弾テロだ。

「じゃあ聞くけど……あなたはどうして、テロリストなんかやってるの?」

彼は一瞬呆気にとられた顔をしたが、すぐ元の顔に戻って言った。

「決まってるさ、他に方法を知らないバカだからだよ」

Fin.

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