Same Old Story
忘れられない
- Picture Remains
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「相変わらず記念写真ばっかりね」
僕の部屋にあがりこんだ彼女は、壁一面に貼られた写真を見て言った。
「記念写真じゃなくて記録写真だよ」
「そうだったわね」
人間が記憶できる物事というのは限られているらしい。それも、かなり少なく。たくさんの思い出を忘れたくなくて、一年くらい前から、僕は頻繁に写真を撮るようになった。記録写真だ。
「それで、写真を撮り続けてる意味はあったの?」
彼女が尋ねる。
「大いにあったよ。写真を見つめていると、まるで昨日のことのように鮮明に思い出せるんだ」
「それは良かったわ」
彼女は、壁一面の記録写真を眺めて言った。
「そうね、三人で旅行に行ったことなんてもう懐かしくて」
「え? どの写真?」
「これ。もうずいぶん昔のことみたいだわ」
彼女は、僕と彼女ともう一人で写っている写真を指差した。
「誕生日パーティーも懐かしいわ」
「ああ、この写真のことかい?」
「こっちよ、それはあなたのお友達の結婚式のじゃないかしら」
「ああそうだ、今思い出した」
「それに懐かしいわ、海に行ったこともあったわね」
「どの写真だったっけ」
「これよ」
彼女の指差す写真を見ながら、僕は考えごとをしていた。写真を撮る習慣をつけたために、それに頼り切って、何があったのか記憶に留める能力が弱まってはいないだろうか。
それと、この女性はいったい誰だったろうか。
Fin.