monologue : Same Old Story.

Same Old Story

一応の結末

「だからさ、悩んで悩んで何もできない、ってなるんなら、結局何もなかったのと同じじゃない。そうでしょ?」
「まあ、極端に言えばそうかもね」
「そうなんだって。自分一人で完結してたら、何も意味ないのよ」
「いや、でも、多分意味はあるよ」

講義の合間、学校の敷地内で、コンビニのパンと野菜ジュースを頬張りながら彼女が言う。

「意味ったって自分の中でだけじゃない。予習時間削って君の恋愛相談受けてる私にだって、やりがいっていうか、達成感っていうか、一応の結末が欲しいわけよ」
「予習なんかしてるところ見たことないよ。大体、いつも君の方から僕を呼び出して根掘り葉掘り聞こうとするんじゃないか」
「まあ、まあ」

押しつけがましさも慣れたもので、こういった会話は、地味に僕の生活に組み込まれていた。小学生の頃から何かと縁のある彼女は、十年以上経っても同じ学校に通い、何かにつけ僕の世話を焼こうとしている。

「まあいいじゃないの、さあ。思い立ったが吉日って言うし、週末にでもその子誘ってどこか行ったら?」
「思い立ったのは君だけじゃないの」
「放っといたら何もしないでしょ。尻叩かれるのもきっかけだと思って……ごめん、電話」

流行の曲がやりとりを遮る。携帯電話が誰かからの用件を知らせ、彼女は素早くそれを取り出すと、液晶に表示された名前を確認してから応じた。

「もしもし、今取り込み中……何? あんた、まだそんなことやってんの? 馬鹿じゃないの、もう……また後で聞くから。じゃあね……ごめん、彼氏」
「トラブル?」
「まあ。また何かやらかしたみたい、もう面倒だから詳しく聞かなかったけど」

ため息をつきながらジュースを飲む彼女を見て、僕はこみ上げる笑いを押さえられなかった。

「いや、ごめん。君が言う意味とか結末が、そのため息のことなのかもって思ったら」
「それはそれ、これはこれで……相手次第だし状況次第よ。今はまあ、こんなだけど」
「それはそれで楽しいのかな」
「かも、ね」

少し彼女が赤面したように見えた。

「そういうのも、試してみたっていいかもね」
「でしょ? 何も生き急いでるわけじゃないんだし、多少無茶したっていいのよ、強引に誘ってみたら?」
「例えば、相手に恋人がいたら」
「奪ってやるくらいの気合いがなくてどうするのよ」

僕は、自分の携帯電話を取り出して耳に当てた。

「それを聞いて少し安心したよ」

突然電話を手にする僕に彼女は驚いていたが、少しすればまた驚くことになるかも知れない。流行の曲が空気を遮る。

Fin.

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