monologue : Same Old Story.

Same Old Story

空想犯罪者

『県警によりますと同様の事件が三ヶ月前にも起こっており、本件との関連を……』

テレビから無機質なアナウンサーの声が流れ続ける。彼に言われるまでもなく、誰の脳裏にも残っているであろう数ヶ月前の事件。正確に言えば、もう一件か二件、同じような事件が起こっていたはずだ。ちょうどさらに三ヶ月前と、もう三ヶ月前。証拠のないうちは誰も明言しないが、安っぽいワイドショーでは既に、連続事件として大々的に取り扱っている。

「ね、またバラバラ殺人だってさ。確か前にも……今、同じこと考えてた?」
「物騒な世の中だな。確か何ヶ月か前にも、同じような事件があったと思う」

テレビにかじりついていた彼女が、不謹慎にも半ば嬉々として、コンピュータで仕事をやっつけていた僕に投げかける。僕は引いていた図面を途中で放り投げて、椅子をテレビの方へ傾ける。

「怖いね。ここから車だと二時間くらいの場所かな」

テロップが切り替わり、政治家の汚職と違法献金の話題。

「……なんか、人が死んでるのに淡白だよね。政治の話ってよくわかんない」

君だって半分喜んでたじゃないか、と僕は言わなかった。

「まあ、殺人も汚職も同じくらい話題性があるってことなんじゃないの」
「そうかなあ……そうなのかもね。一人殺されるのと何十人何百人と迷惑被るのと、同じことなのかも」

明らかに飲み込めていない様子でも、僕に話を合わせようと取り繕う彼女。

「ねえ、バラバラ殺人犯と、違法献金汚職政治家と、どっちが悪人なのかな」

そりゃあ、と言葉にしかけて飲み込む。殺人犯は確かに残虐極まりないが、政治家だって、直接手を下さないだけで誰かを死なせている、なんてゴシップも耳にする。より多くの人間を苦しませる可能性があるのなら、より大きな影響力を持つ人間が私利私欲に走る方が悪人と言える……のだろうか。

「さて、どうだろうね。よくわからないな」
「……そうだよね」

そもそも僕には、彼女とそんなことを言い合うつもりもなかった。

(言う資格だってない)

本当に人を殺してしまう人間と、誰かを使って誰かを死に追いやる人間と、誰かが死ぬことを好んで空想する人間と、どれが一番罪深いのだろうか。ある宗教は、心に描いた時点で罪なのだという。

(だとしたら)

興味本位で人間の死体の写真を集めるような男は、彼らと同じくらいに罪深いだろうか?

「ねえ、さっきのバラバラ殺人、やっぱり連続殺人事件なのかな」

無邪気に問い掛ける彼女。空想する。誰かの死を覗き見る僕のような人間が、熱に浮かされたように誰かに手を掛けることを。無邪気な彼女を、好奇心と興味から手に掛ける、無邪気な僕の姿を。

Fin.

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