monologue : Other Stories.

Other Stories

チャイルドメイカー : 2/13

『このソフトは、公式サイトにてバージョンアップが通達されています。パッチを今すぐダウンロードしますか?』
「バージョンアップ?」

ゲームをインストールして最初に出た画面がこれだった。どうやらこのソフトを作った会社が、公式サイトかどこかでパッチを無料配布しているらしかった。ゲーム中に何かバグでも見つかったのだろう。まともに遊べないかも知れないソフトを持っていても仕方がない、僕はすぐにパッチをダウンロードすることにした。

『ダウンロード中……しばらくお待ちください』
「しかし、こんなことは数年前じゃ考えられなかったよな。回収騒ぎにはならなかったのか?」

そんな騒動は全然記憶にないから、きっと大した問題にはならなかったのだろう。

『システムを最適化しています……』

やがて画面が真っ暗になり、どうやらゲームが始まったようだった。

『あなたの名字を入力してください : 』
「む、ら、い……と。名字なんか必要なのか?」
『あなたの名前を入力してください : 』

どうせ両方要求するんなら一度に済ませろよ、などと文句を言いながらも入力する。多少使い勝手が悪いのは少し前のソフトにはよくあることだ。

「ゆ、ず、る……と。次は何だ?」
『あなたの子供の性別と名前を入力してください : 』
「名前……か」

妻が連れて行った僕の娘は "亜理紗" という。フランス人形やアンティークドールなんかが好きな妻がつけた名前だ。僕はこのゲーム中の子供に、それをもじった名前を付けてやることにした。

「娘の名前は……アリス、と」

おとぎ話の主人公と同じでこじゃれた名前だし、少し洋風の名前の方がいいだろう、とも思った。名前を入力すると画面が明るくなり、一人の女の子の姿が映し出された。

「うわ……昔のゲームにしてはリアルだなあ」

思わず僕は感嘆の声を漏らした。そして、ゲームはもう既に始まっていた。

To be continued

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