1. monologue
  2. Other Stories
  3. カウントゲーム
  4. 気付いたときには

カウントゲーム

  1. ゲーム開始
  2. 発見
  3. 68
  4. 気付いたときには
  5. 転送
  6. 消去不可
  7. 試み
  8. 悪く思わないで
  9. 救いの手
  10. 君のための努力
  11. 打開策
  12. 要求
  13. 勝利の代償
  14. 簡単なこと
  15. ゲームオーバー

気付いたときには

Day 1, PM 04:03 Chapter 1: 秋田 一輝

「九時ちょっと前か。今四時まわったところだから……七時間か」

二時間に 1 経るなら……と指折り数えながら、自宅方面へと向かうバス停まで歩く。校舎からバス停までそれほど距離はないし、バスに乗ってしまえば自宅まではすぐだ。

バス停で時刻表を眺めて、次のバスが来る時間を確認すると、腕時計と見比べながら近くのコンビニに足を運んだ。まだ時間に余裕はある。

「セブンスター、二箱。ライターも。あ、あとトイレ借ります」

煙草を補給してポケットに突っ込むと、迷うことなく店内のトイレに向かう。煙草は確かまだ買い置きがあったはずだ、彼はそう考えながら、ただトイレだけ借りることができない自分が少し可笑しくて笑った。

「謙虚と気が小さいのは違うかな」

またぼそぼそとつぶやきながら、トイレの鏡と向かい合う。そこで、彼は鏡に映った自分の後方に、何か落書きがあることに気が付いた。振り返らずにそのまま、鏡に顔を近付ける。そうしたのは、その落書きが鏡に映ったままでも読めたからだ。鏡文字の落書きなんて洒落てるな、などと思いながら、彼は目をこらした。そしてその落書きを、無意識のうちに声に出して読んでいた。

「 ア ト 64 カ ウ ン ト 」

何かが体中をなでまわしていった気がした。跳ね除けるように振り向くと、そこには落書きなどなかった。

彼は先程までの大人しい態度とは別人のように、トイレを出ると扉を叩きつけるように閉めてコンビニを飛び出した。ちょうどバス停には彼の自宅方向へのバスがやってきていて、乗り口を開いたところだった。何も言わずに駆け寄り、バスに乗り込み、最後尾の窓側の席に座る。

彼は、爪を噛みながら考え事をしていた。

「九時ちょっと前か。今四時まわったところだから……七時間か」
「二時間に 1 経るなら」
「 ア ト 64 カ ウ ン ト 」

見間違いじゃない。普通じゃない。あの、なでまわされるような感覚はいったい何だ?

バスに揺られる数分の間、彼の頭の中ではずっと同じ文章がループしていた。自宅に着いて扉を開けて、つけっぱなしの PC のモニタに、スクリーンセーバーの文字が何度も何度も飛び跳ねているのを見たとき、彼は「ああこれは、きっと伏線だったんだな」などと考え事をした。頭の中をループした文章。モニタ上を跳ね回る文字。ミステリー小説やホラー映画によくある、そう、ああいう伏線だ。

「くだらない」

くだらない、友人のちょっとした悪戯だ。そのはずだ。マウスにゆっくりと右手を伸ばす。親指と薬指ではさみ、人差し指と中指をボタンの上に置く。

「くだらない」

マウスをほんの少しだけ動かす。一瞬、画面が暗転する。スクリーンセーバーが解除された画面には、今朝と同じメールの画面が映されていた。残りの数値は、64 と示されていた。

To Be Continued