Other Stories
目には目を : 1/5
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4 / 1 AM 2:12
真っ暗な部屋に電子音が響き、やがてそれが人間の声に変わった。
「はい、もしもし……あ? ヨウイチに連絡が取れない?」
くだらないことだ、と寝ぼけた頭で思いながらも、シンヤは携帯に耳を押し付けた。手探りでベッドの横のランプに手を伸ばす。通話口の向こうからは、煙草でしわがれた声が聞こえてきた。
「もう三日も電話に出ないんだぜ? 何回コールしたと思う?」
「いつものことだろ? 二・三日でガタガタ騒いでんじゃねぇよ」
くだらないやつだ、と改めて思った。ガキじゃあるまいし、誰がいつからいなくても俺の知ったことじゃない。よくつるんでるからって家族扱いでもされちゃ大迷惑だ。
「とにかくちょっと落ち着けよ。もうすぐ二十歳になるガキだろ?」
受話器の手前で本音を飲み込んで、シンヤはちょっと大人ぶってみせた。
「でも、万が一ってこともあるだろ? お前だって……」
「くだらないこと思い出してんじゃねぇ、こっちは今オンナと一緒なんだよ」
「……わかったよ、悪かった。気にしすぎだよな」
「また何かわかったら連絡するからよ、しばらく大人しくしてろ」
相手の言葉も聞かずにそう言って、さっさと通話終了のボタンを押してしまった。
“鈴木 カズマ 通話時間 3 分 24 秒”
ディスプレイに表示された通話時間と相手の名前を見て、思わずシンヤは小さく声を漏らした。それに反応するように、シンヤの隣に寝ていた女が目を覚ました。
「おっと、ちょっとしたミラクルだ」
「……電話何だったのぉ?」
「ん、何でもねぇよ。お前が気にすることじゃない」
そう言ってシンヤは、女の頬に軽くキスをした。
「ミラクルってなに?」
「何だ、そんなことまで聞いてたのか」
飽きれたような声でシンヤが返す。
「数字がさ、ちょっとした記念日と重なっちまったのさ」
「記念日……?」
「あー、ミホは知らなくて当たり前だ。俺たちが出会うちょっと前の話だから」
「何なの? 気になるじゃん」
「……知りたいか?」
「教えてよ」
「俺が何て言っても驚かないか?」
「うん、驚かない」
「通話記録が三分二十四秒って表示されててさあ、それが……」
「三月二十四日? 何かあった日なの?」
「俺と仲間でレイプした女が自殺した日」
聞こえなかったのか話が飲み込めなかったのか、ミホと呼ばれた女はしばらくシンヤを見つめていた。
「ウソばっかり」
そうつぶやくと彼女は布団の中にもぐりこんだ。シンヤは何も言わず、ただ携帯のディスプレイを眺めていた。