monologue : Other Stories.

Other Stories

長い長い手紙 : 2/12

「なんだこりゃ?」

最初に出た言葉はそれだった。差出人名のないこの封筒は(それだけで十分奇妙だったが)、他にもいくつかおかしな点があった。その中でも一番目をひいたのは、宛先のすぐ上の部分だった。

「62 円切手と、18 円切手……」

僕は筆不精な方だが、郵便料金の改正くらいは知っている。何年か前に封書の料金は 80 円に値上げされたはずだ。そしてそれ以前は 62 円だったことだって常識だろう。

「……80 円、だよな」

確かに 80 円ではあるが、これは不自然という他なかった。18 円切手は、改正以前の 62 円切手を有効活用する目的で発行された。切手の合計金額が合計 80 円になるように、何枚も何枚も一円や五円の切手を貼るのは煩わしいだろう。問題は、なぜ今さらそんなもので封書を送ってきたか、だった。

「極度の筆不精で、たまった 62 円切手と 18 円切手を処分したかった」

誰にともなくつぶやいてみるが、これはどうも無理があった。筆不精な人間が切手を買いだめておくわけがない。

「郵便番号も三桁のままだな」

これも何年か前に七桁を推奨するようになったはずだ。変更後すぐには三桁で書いていても、それはもう何年も前の話だ。今なら調べようと思えば、郵便番号くらい簡単にわかるだろう。

「中身を見たら、ちょっとは謎が解けるか」

ペーパーナイフを探す手間も惜しかったので、僕はやぶいて開封することにした。電車に遅れることはなさそうだったが、帰省の格好で玄関先にいるのも不自然で、なんだか不恰好な気すらした。さっさと用事を済ませて実家に帰ってしまおう。

「便箋が一枚」

薄くて透けるような便箋が一枚、他には何も入っていなかった。そしてその便箋は、ますます僕を混乱させるだけだった。

「……はあ?」

やはり差出人の名前のない便箋には、ただこう書いてあるだけだった。

ずっとずっと好きでした

To be continued

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