宅配便
- Delivery
- http://www.junkwork.net/stories/other/010/004
「郵便です」
宅配便か何かの配達員の声で僕は目を覚ました。
「んん、日曜くらい、ゆっくり昼まで」
「郵便です」
インターホンは何度も何度もけたたましく鳴り、布団から出ようとしない僕をついに動かした。印鑑をわしづかみにして、玄関まで不機嫌な足取りで歩く。
「はい、どちら様?」
「郵便です、ここに印鑑をください」
誰か聞かなくてもわかっていてわざと尋ねた僕に、配達員は無愛想に答えた。僕の皮肉に応じるつもりは全くないらしい。
「どこから? 何の小包?」
配達員から渡された小包は 40cm 四方くらいの大きさで、重さはそんなになかった。通信販売なんかで買った記憶もないし、送ってくるような人も思い当たらない。
「ねぇ、これ誰の」
顔をあげた僕の目の前に、配達員はもういなかった。さっさと仕事に戻っていってしまったのだろうか。
「無愛想なやつ」
部屋に戻って小包を破ると、中から何か布の端のようなものが見えてきた。割と上質な布のようで、キレイな青色をしていた。
「何だろう? スカーフ? ますます身に覚えがないな」
小包の包装紙を全部破って、中身を完全に取り出してみる。それは、丁寧に作られたドレスだった。サイズからみて子供用の。
「……これは」
それは昨晩あのゲームで、僕がゲームの中で "アリス" に買い与えたものと瓜二つだった。電源の切れたままのパソコンを見つめる。
「後で請求書がどどっと、なんてことになったりして」
笑えない冗談をつぶやいて、僕は呆然と立ち尽くした。もしかしたら僕は、何か面倒なことに足を突っ込んでしまったのかも知れない。